第3回公演 森本薫「ますらをの伴」

ドナルカ・パッカーン第3回公演
『ますらをの伴』

作 :森本薫
演出 :川口典成(ピーチャム・カンパニー)

日時

2017年7月6日~9日

7月6日(木) 20時
7月7日(金) 14時/20時
7月8日(土) 14時/18時(18時からの回ポストパフォーマンストークあり)
7月9日(日) 14時

辻田真佐憲氏のプロフィール(7月8日18時開演の回のトークゲスト)
1984年、大阪府生まれ。作家・近現代史研究者。慶應義塾大学文学部卒業。 現在、政治と文化芸術の関係を主な執筆テーマとしている。 著書に『文部省の研究』(文春新書)、 『大本営発表』『ふしぎな君が代』『日本の軍歌』(以上、幻冬舎新書)、 『たのしいプロパガンダ』(イースト新書Q)などがある。

会場

SANAIZAKA STUDIO(左内坂スタジオ)
(東京都新宿区市谷左内町28)

出演

田辺誠二
河村啓史
鈴木ユースケ
恩田匠
荻野哲矢

上演に際して

ニッポン人へ

うしほ波 ながるるきわみ すめ国と
思いてゆかね ますらをの伴

昭和一八年一〇月一日、内閣総理大臣であり陸軍大臣である東条英機は在学徴集延期臨時特例を公布する。それまで大学などに所属する学生は二六歳まで徴兵は免れていたが、その猶予を撤廃するものだ。いわゆる学徒出陣である。同月二一日、明治神宮外苑競技場にて学徒出陣壮行会が開催される。冒頭に掲げた歌は、東条英機首相による訓示に登場する、学徒たちに捧げられた一編の歌だ。現代語訳すれば、「大海原の果てまで天皇の国と思って行って来い、立派な男である我ら同士よ」というあたりであろうか。

劇作家である森本薫はその壮行会の直後にラジオドラマを執筆した。それが『ますらをの伴』である。舞台を学生たちの寄宿舎に設定し、学徒出陣してゆくものたちとそれを見送るものたちとのほんの一時間にも満たない小編であるのだが、このテキストのなかには戦争を下支えする、つまりは「銃後の精神」の論理と情動が、見事に凝縮され描写されているのだ。私はこのテキストを、躊躇うことなく「傑作」と呼ぶ。ここには少なくとも森本薫という人物とそれを取り囲む共同体の政治性との一体化があり、その結び付きを決定的なものにしているのは、与えられた状況を、「誰が選んでくれたのでもない、自分で選んで歩き出した道」(『女の一生』)とする森本の精神である。

『ますらをの伴』は真正の戦争翼賛のテキストである。

その論理と情動を呼吸するために、批判や批評、距離化やコメント的態度は一切が排除される。

そしてこの舞台上演は、平成の戦争翼賛演劇となる。

ドナルカ・パッカーン

舞台写真

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